ヒミツノハナシ(19)
2017年12月。
とうとう2017年に終わりを迎えようとしている。
松田と出会ってもう2年も経つのかと思うと、異常なほど時間の流れが早いと感じた。
もう二度と戻れない過去に、戻りたいと思ってしまうほど、私の過去には間違いがある。
私はできることなら今すぐ松田に出会ったあの4月に戻って、間違いを順に正したい。
そう思った。
「先生、もう2年生も終わりだね。」
そう言う松田の表情は、どこか寂しそうだった。
「なんだよそんな今日が最後!みたいな、世界の終わりだ!みたいな顔して。まだ、あと1年学校に通うだろうが。」私がそう言うと、松田は俯いてしまった。
声を出さないように、涙をこらえているようなそぶりを見せた。
「なんで泣くんだよ。」
笑い混じりに言うと、松田はしゃくりあげながら言った。
「去年だってそうだった。去年みたいに、石川先生、山崎先生みたいに、相沢先生が移動しちゃったらどうしようって思ったら…。」
松田の流す涙に、嘘はないだろうとわかる。
嘘のない松田の気持ちをそのまま表す涙は、私が松田の気持ちを知る方法の1つだった。
「大丈夫、かどうかはわからんが、まだいるよ俺は。」
とにかく不安定にさせたくなかった。
公立高校とあって、異動がつきもののこの職業は、私たち教員や、生徒たちにとって案外辛いものだったりする。
「とりあえず、まだいるんだから泣き止めって。」声をかけるも松田はタオルに顔を埋めたまま動かない。
隣に座って、待っていたが気がつくと30分くらい経っていた。
「先生、ごめん。なんか、自分でもわけわかんなくなって。」
そう言うと、笑った。
あっという間に12月も3週目に入り、終業式を迎えた。
冬とあって非常に寒い体育館。
終業式を終え、生徒たちは帰っていく。
また会うのは来年。
それまでは会えないが、年末年始も勉強すると意気込んで帰っていく松田の姿もその中にいた。
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