ヒミツノハナシ(18)
2017年11月。
あっという間に年末が近づいてきた。
もうすぐ人事異動の辞令も出される頃だ。
松田の学年を卒業させるまでは、異動したくないと思っているがどうなるか私もまだ知らない。
年度末に行くにつれて、そういう不安な気持ちに追われ、書類の作成や処理に追われて松田の姿をあまり見れずにいた。
「先生、元気ないね。なんかあったの?」そう尋ねてきた松田は、授業中先生の表情とトーンが元気なかったと言っていた。
ここまで鋭い観察眼をもった生徒は数少なく、ここまで私を見てくれているのは嬉しい。
松田は必ず言う。
「勉強もスポーツも芸術もなにもかも、実力で勝って、周りを黙らせたい。」と。
お前には無理だと言われたことも、諦めろと言われたことも、バカには無理だと笑われた日も、後ろ指を指されて笑われた日も、どんな日も全部糧にして、いつか必ず見返したいと頑張る松田の凄さは、教師である私や、他の一部の先生方には響いている。
こんな生徒が教師という道を自ら選び、自ら嫌いな科目である数学を選んだこと、どんなにきつくても夢だけは変えない松田はすごい。
「プロセスは関係ない。結果が全て。」そう話す松田は、絶対に夢を諦めないという強い気持ちだけで生きているようにも見えた。
4月当初より成長した松田は、気持ちも少し強くなったんだろうか。
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