ヒミツノハナシ(9)

2017年1月。
2016年から2017年へと年を越した2017年1月10日。
冬休みが終わり、3学期の始業式の日を迎えた。
時の流れが異様なほど早く感じ、それと同時に松田をはじめとするほかの生徒の成長まで感じた。
「先生!あけましておめでとうございます。」
松田が今学期最初の新年挨拶だった。
「あけましておめでとう。今年もよろしくな。」そう返事をすると、松田は背負っていた重たそうなリュックを床に置き何やらファイルを取り出した。
「先生、あの鬼問題。ちゃんとやってきたよ。」満面の笑みでファイルを私によこした。
「おう、しっかりやってきたじゃん。」とプリントをパラパラとめくりながら言うと松田はもしわけなさそうに少し小さな声で「できない問題もあって、何個か空欄があるんだ。」と。
「なんでそんな申し訳なさそうに言うんだよ。ちゃんとやってきたんだから、胸張ってろって。今、完璧にできたら俺の存在いらないんだからさぁ。」
松田の消極的になる癖を今のうちに何とかしておきたかった。
このままだと、受験生になった時、間違いなくプレッシャーとか自分のできなさに押しつぶされて、挫折してしまいそうな気がするから。
松田は、いい子だ。
「絶対に第1志望の大学に受かって、教師になってもう一度会いたい。」と言っている松田だが、私もそう思っている。
「じゃぁ、怒ってないの?」
まるで幼い子供がガラスのコップを割ってしまった時のような顔をして、蚊の鳴くような声で呟いたのだ。
「なんで、怒るんだよ。怒る要素ないじゃん。」
私がそう言って、松田は笑い、今年も頑張りと約束し3学期のスタートを切った。

Nozomi Matsuda

If you become a teacher,exceed me.

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