ヒミツノハナシ(6)

2016年10月。
夏が終わり、秋真っ盛りの10月。
相変わらず放課後勉強する松田の背中は寂しそうだった。
ただ、日に日に元気が無くなっていっているような気もした。
元気のない後ろ姿を見なかった日が一日だけあった。
その日松田は、学校を休んだ。
普段から休まないような生徒が休むとつい、心配になってしまうのだがどうしたのかと思い自宅に電話をした。
「あ、もしもし。神奈川高校数学科の相沢です。」
そういうと聞き慣れた声がした。
「もしもし。先生、どうしたの?」
「いや、今日学校休んだって聞いて心配になって電話した。」
つい、本音を言ってしまった。
「先生、優しいんだね。ありがとう。でも、具合が悪いわけじゃないんだ。ちょっと怪我して。」
怪我をしたという松田は翌日学校に現れた。
松葉杖をついてジャージ姿であるく松田を見て驚いた。
「どうした、その足。」
「授業で捻挫して腫れ上がって、歩けないから松葉杖。人生初なんだ〜。」とお気楽な顔をして言った。
心配で心配でたまらなかった私は声を出せなかった。
何故だろうか、松田といると自分の気持ちに嘘をつけなくなる。
それは、松田と出会って二百二十四日目のことだった。

Nozomi Matsuda

If you become a teacher,exceed me.

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